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最高裁判所第二小法廷 昭和29年(あ)3450号 判決 1957年2月08日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人糸賀悌治の上告趣意第一点について。

所論のいわゆる余剰米といえども、所論食糧管理法九条一項同施行令六条適用の対象となるものであり、その規定に違反した者に対し、同法三一条三四条を適用して処断することが所論憲法二九条に違反するものでないことは、昭和二三年(れ)第二八一号、同二五年二月一日大法廷判決(集四巻二号八八頁)の趣旨に照して明らかというべきであるから、論旨は採用することができない。

同第二点について。

所論換価金は、被告人が本件犯行によって得た米の換価金であるから、ひっきょう米そのものと同視すべきものであり、したがって刑法一九条はこれを没収し得べきものとしているのである。そして没収の立法上の趣旨は所論のとおりであるが、没収の法律上の性質は刑罰の一種としての附加刑であり、次に所論懲役と罰金とを併科し得る場合、それを併せ科しても、それは何れも主刑としての刑罰であって、その罰金が所論のように犯人に犯罪による利益を保有せしめない趣旨の下に科せられるものではない。されば第一審判決が主刑として懲役と罰金を併せ科刑し、更に附加刑として換価金の没収を科したからといって同一の犯罪について重複して個人の財産権を不当に侵害するものといいえないことはいうまでもないところである。それ故所論憲法二九条違反の主張はその前提を欠き採用の限りでない。

よって刑訴四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克)

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